ドロスグロップの評判

ブライアン・デグロウ、リジー・ボウガツォス、ジョッシュ・ダイアモンドを中心とした、ポリリズミカルなダンスナンバーでも話題を呼ぶ米ロックバンド、ギャング・ギャング・ダンスのリミキサー参加でも注目を集める、バトルスの「ドロスグロップ」は、ジャンルにとらわれない新たな音楽の形として高い評価を得ています。

 

もともと、ヒリヒリとした刺激的な音楽性を誇っていたバトルスが、ポップさ、ブライト感を持ち合わせる「ギャング・ギャング…」などのとコラボレーションを企画した理由には、ボーカルの脱退が大きく関連しています。

 

それまで、Gt, Ba, Efを担当するデイヴ・コノプカ、Gt, Keyのイアン・ウィリアムス、ドラムスのジョン・ステニアーに加え、Vo,Gt, Keyのタイヨンダイ・ブラクストンと言った顔ぶれのグループでした。ですが2010年にタイヨンダイが抜けることにより、ボーカル不在となり、バトルスのサウンドは大きく変貌期を迎えます。

 

そこで実行されたのが、ゲイリー・ニューマン、マティアス・アグアーヨ、カズ・マキノ、山塚アイをゲストボーカルに迎えた、「グロス・ドロップ」の制作です。それまでの音楽性からは大きく変化し、シンセサイザーも取り入れた聴きやすいサウンド感が注目を集めました。そしてその次なる展開として作られたのが、冒頭の「ドロスグロップ」なのです。

 

ネーミングからも連想できる通り、こちらは「グロス…」に収録されたサウンドのリミックス盤となっています。絶妙なもじりによってつけられたタイトルが、何ともハイセンス擁するバトルスらしい仕様となっています。ギャング・ギャング・ダンスをはじめとしたリミキサー陣は、とにかく個性豊かな顔ぶれとなっており、原盤の音像を大きく彩りました。

 

さらには、当時まさに名を馳せつつあった、躍進過程にあるクリエイター、フィールド、コード9、ギ・ボラットと言った作家も名を連ねています。エクスペリメンタルロック、ポストロック、ポスト・ハードコア、プログレッシヴ・ロック、マスロックなどの流れを汲むバトルスですが、その枠をも超えた自由度の高いアルバム作品へと仕上げた形となっています。

 

企画におけるそもそもの経緯としては、世界中のインディペンデントなレコード店を盛り上げると言った趣旨のもと行われた「レコードストア・デイ」にあります。その理由から、前年にリリースしていた「グロス・ドロップ」を基盤に、リミキシングプロジェクトが遂行されたのです。結果、本来の目的はもちろんのこと、幅広い層のファンに嬉しい衝撃を与える一作の誕生に繋げられたのでした。